今期は『日々は過ぎれど飯うまし』を毎週楽しみにしているのだが、同じくらい『ざつ旅』もいい。ちょうどGWで5連休とれたので、行き先をなぞった。
富山・黒部。4月から東京に来て、喧騒で疲れていたので、ただゆっくりしたいというだけの旅。だから、予定は詰め込まず、2か所だけ。
1日目、生地。「いくじ」と読むようだ。港が目の前にある魚の駅で、日本海の魚の刺身を食べた。大学生のときは醤油オンリーだった気がするが、いつからかわさびをつけるようになった。鼻がツンとならない程度ならつけた方がいい。
そして、白エビの素揚げも注文。実は、この富山旅で、白エビを食べたいと思っていた。『〆切前には百合が捗る』という作品で出てきて、愛結と優佳理がめちゃくちゃ美味しそうに食べるのだ。ずっと機会を伺っていた。いざご対面!期待通りの旨さだった。
宿は3時チェックインなので、時間潰しに生地を散策。富山湾が最も美しく見える海岸とやらに行った。確かに、その名に恥じない景色だった。まるで終末世界のように時がゆるやかに流れ、ゆっくり打ち寄せるさざ波が高速で岸を伝っていくのを見て、物理のエッセンス波動の最後の問題を思い出した。波の山が波の速さと一致しないのが、やっと明確に理解できた。
そして、バスの時間合わせに清水を見学。「しょうず」と読む。生地に何ヶ所もある湧水が出ているところで、地元民の生活に利用されている模様。とても風情があって、手を浸すと冷たく、まだ立山連峰に被っている雪を間近に感じた。
いい時間になり、超小型バスに乗り、地方鉄道に乗り換え、宇奈月温泉へ。2カ所目の目的地である。部屋が余ってたらしく、お値段そのままでワンランクアップ。GW最終日万歳。絶景。
ひと息ついて、温泉へ。まだ4時だったから先客ひとり。そのおっさんが上がったので露天風呂を貸し切り。今まで、温泉の何がいいかわからなかったが、それは疲れていなかったからだ。今回、正直疲れていた。1か月、事あるごとに「東京出たい」と呟いていた。心から癒しを求めていた。
露天風呂で、黒部峡谷を見上げ、黒部川を見下ろしぼーっとした。新緑がきれいで、まだ少し冷たい風も心地よかった。人から聞く旅の話は刺激的なものばかりで、疲れそうだと思って引きこもっていたが、心落ち着く旅もあるのだと、『ざつ旅』に教えてもらった。こういう旅なら定期的にやりたいな。
夕食は「白エビ会席」にした。白エビが釜飯やら饅頭やら色んな料理になって出てくるのだが、普通の刺身はほんの少し。おそらく、鮮度がいいのはかなり希少なのだろう。ありがたくわさび醤油でいただいた。白エビ、またいつか食べたい。
温泉嫌いを豪語していたくせに、夕食後も入り、2日目の朝も入った。因みにこれは海老優佳里理の影響。何度入ったっていいのだ。
そういえば、ホテルのスタッフはほとんど外国人だった。時代だよな。みなさん日本語をがんばっていたし、接客態度もよかった。どんな仕事もだが、特にサービス業は完璧を期待されるので、緊張感がある。勉強になる面があった。
帰りにフロントに『ざつ旅』コーナーがあったので読んでみると、なんと泊まった宿が同じだった!そこまで調べてなかったから、おお!てなった。そして、鈴ヶ森ちか先生が乗れなかった黒部峡谷鉄道へ。
見たことないような深い谷を縫うように進む列車。自然の恐ろしさと、人間の偉大さを感じた。こんなところにダム作ったり線路通したりせずに何も知らないふりして寝てれば死ぬことなんかないのに、人間はやってしまう。もしくはやってくれる。治水とか利水とか、本で学んでも実際に目にすると圧巻だ。よくこんなのできたな、何人死んだんだろう。
富山に初めて来て、厳しくも豊かな自然と人間の営みが重なり合っている風景をたくさん見た。そのひとつが一面に広がる水田で、水面に映る雲がきれいだった。農業土木で学んだおかげで、少し解像度が上がって見えたのが嬉しかった。知識が体験を豊かにするという経験ができた。
さて、明日から仕事。稼いだら、またどこか行きたい。